2013/11/19

バイク乗りとして。(師匠の言葉)

今年を振り返るにはまだまだ早いが、今年はバイクに対する見方がかなり変わった。バイクをGSR750へ乗り換えた事はもちろん、自分自身の事故、ツーリング中の事故数件を目の当たりにして、安全運転、ライディングに対する意識というものが特に変わった。

人様のライディングがどうのとか言える程の知識もないし技量もないが、少しでも読んでもらった方の目に留まればと思い、私がライディングの師と仰ぐ方が自身の日記の中で自己紹介として綴った手記を許可を得て下記に転載する。


ここしばらくで、元々の付き合いのあったバイク仲間との縁が切れ、新しいバイク仲間が増えました。
何人かの方は古くからの知人なので、自分がどういう人間で、どういう乗り手かを知っていますが、知らない人に向けて自己紹介。


自分は今年で42歳になります。
仕事は整備士をやっています。
元はクルマの整備士で、今はフォークリフトの整備士をやっています。

バイクの整備も一通り出来ますが、バイクの整備士はやりませんでした。

16でバイクの免許を取って、すでに25年。
その間に、手元にバイクがなかった時期は2週間ぐらいです。
次のバイクを買うまで手元に無かったとか、そんな感じ。


自分が免許を取った頃は、レプリカ大全盛の時代で、遅い奴には発言権がないとか、極端に言うとそんな時期でした。


自分はその頃に、自分の目の前でバイク仲間を亡くした事があります。
センターラインをはみ出して対向車と衝突。
救急車が来る前に、脈は取れなくなりました。

当時の自分よりは速い奴でした。


その後も、何人ものバイク仲間を亡くしました。
Uターンするトラックがケツを振る、という事を知らず、振り出され、自分の目の前にはみ出したトラックの後ろの角に衝突。
事故からしばらくは意識があり、お見舞いにも行きましたが、肝臓に負ったダメージで容態が急変して亡くなった人。

首都高湾岸線を走っていて、一瞬の前方不注意で停まっていた清掃車に追突して即死した人。

普通にスクーターで、後ろに小学生のお嬢さんと走っていて、ウェット路面でスピンした下手くそなクソガキに突っ込まれ、お嬢さんと共に逝ってしまった職場の同僚。

他にも何人もの人を送ってきました。


最初の仲間のお母さんが、一人息子の死を受け入れられず、俺に向かって叫んだ言葉「うちの子が死んだのに、何であんたは生きてんの!」
自分はこの言葉を忘れる事が出来ません。

そんな事を言うタイプの人ではないのに、あまりに大きな悲しみを背負った時に、人は自分を見失ってしまう。

死んだ本人よりも、残された方がずっと辛い。
自分がそれを知った瞬間でした。



自分のバイクライフの25年のうち、20年ほどは「どうすればバイクの悲劇を減らす事が出来るか。」
そればかりを考えてきました。


知らず知らずの整備不良や、本人に自覚のない危険な乗り方、技量不足を補う事が少しでも出来れば、それがライダーを生かす事に繋がるのではないか、と自分は考えました。

しかしそのためには、自分が下手じゃいけないし、自分が無知でもいけない。

峠での競争で逝った最初の仲間の記憶もあり、自分自身はバイクの競技にはさほど興味はありません。
自分の知識や技術は、自分以外のライダーの「生き延びるための安全性向上」のために、知識や技術が欲しいと思う人のために学び、考え、身に付けたものなのです。



バイクで死なない唯一の方法は、バイクに乗らない事。
それは重々承知しています。

でも、バイクが好きなら、残される人たちのためにも、ライダーはバイクで死んではいけない。

好きで乗り続けるのならばなおのこと。

自分の身を守れる技術と知識を身に付ける事は、自分はライダーとしての義務だとさえ思います。

乗っている限りはどうしようもない事はありますが、それでも最後の最後まで、ぎりぎりまであがける乗り手になって欲しい。
「生きる」という事のために、振り絞る技術の引き出しを増やして欲しい。
「昨日の自分ならぶつかってたかも知れないけど、今日の自分は大丈夫だった!」と言える成長をして欲しいと思う。


バイクに乗らない人間から「バイクは危ない」と言われて「うっとおしいな」と思ったライダーは多いと思いますが、そんなバイクに乗らない人間に「ほらやっぱり」と言わせてはいけない。
自分はそう思っています。 


自分も長くバイクに乗ってきて、最近は無いですが、過去、公道での事故や転倒はありました。
練習中のぼてゴケは今でもちょいちょいやってますが、アレは転びに行ってるようなものなので、ノーカウントw



事故に関して言うと、自分の最後の事故は、1999年の2月14日。
つまりある意味「ミレニアムバレンタイン」です。
日付的には忘れもしねーw


クルマの後ろを走っていたら、対向車線で右折待ちをしていたK11マーチのおばちゃんが、自分のバイクのどてっ腹にどっかーん。
見えなかったんですって。

ぎりぎりまでフルブレーキングしながらの回避行動を取りましたが、向こうから突進される分にはどうしようもなく、当時乗ってたDT230ランツァのチャンバー辺りにマーチのフロントがめり込み、バイクは「く」の字に曲がって一撃全損。
自分には入院が付いてきました。



当時、彼女も居なかった自分にバレンタインのチョコをくれる人がいるとは思ってなかったですが、まさかミレニアムバレンタインに、知らない女性(子持ちのおばちゃん)から事故貰って、もれなく全損と入院が付いてくるとは、もっと思ってなかったですよ。

我ながら「なんだこの俺のネタまみれ人生は」と思ったもんです。




さて、ここから本題。


多くのバイク乗りは、転倒や事故の経験があるんじゃないかと思います。
その転倒、もしくは事故の日に「今日、自分は転倒する」とか「今日、自分は事故に遭う」とか、乗り出す前に予測出来ていた人はいますか?


ま、当然の事を聞くな、って話ですよね。
自分もまさか、その日に事故に遭うとは思ってないし、思ってたらそもそも乗ってない。


でもそれは、逝った人間も同じなんです。


自分には「痛かったけど、笑えるネタにもなった事故の日」

逝った仲間にとっては「自分の命日」



実際は、その違いは運の差だけかも知れません。
だけど、準備をしておく事で防げる「運の悪さ」は多分ある。


目の前に飛び出してきたクルマを交わせる技量。
思いっきりのフルブレーキングが出来て、タイヤのロック&リリースをもコントロール出来るブレーキングスキル。
フルブレーキを維持しながらの回避行動を取れる技術。

怪しい動きのクルマを見抜く知識。
信頼出来る動きを返してくれるバイクを維持するだけの、メンテナンスの知識と技術。
自分の技量でどうにか出来る限界に対する理解。

こういうものの有無が「目の前にクルマが割り込んできた運の悪さ」を「あぶねぇな!」と罵りながらの「回避と言う名の安全」と「自分の命日」を分ける、と自分は思っているのです。



もちろんどうしようもない事故もあります。
自分の現時点での最後の事故は、今の技量を持ってしても、どうしようもないだろう、と、今の自分でも思う。


だけど自分自身に置き換えた時に、年間2万キロ以上走る中で、最後の事故以来の14年間の28万キロの間で、技量と知識が自分の身を守ってくれた、と実感する機会は何度もありました。



上手い人でも逝く事はある。
残念ながら、それが自分の愛する「バイク」という乗り物にある負の一面である事を、自分は全く否定出来ない。

だけどそういう上手い人が、技術と知識を総動員してもどうしようもなかった事と、下手で知らない人が、下手で知らないが故に「上手くて知ってればどうにかなったはずの悲劇」に巻き込まれる事は、自分にとっては全く違う事なのです。




上手くなりたい人。
知りたい人。
生き延びるために上達したい人。

そういう人には、自分の持つ知識も技術も経験も、その一切を出し惜しみはしません。
何でも聞いてください。
死にたがりに教える事はないですが、生き残りたい人に生き残る術なら、何でも教えます。


自分は、自分が好きなバイクという乗り物で、仲間を送るのが何よりも嫌です。

あなたに何かがあった時に悲しむ人のために、上手くなってください。
バイクが好きならね。


心からそう思って、自分は今日もバイクに乗っています。


ま、こんな事ばっかり20年考えてきたのが自分です。


自分も含め、バイク乗りは身勝手なんでw自分より下手な人間の言う事は、どんなに正論でも聞かないし「昔俺も乗ってたんだよ~」とか言う人間に至っては、うざったがるじゃない?(笑)

だから乗り続けて上達する事が、唯一自分に出来る事だったんですよね。


とは言え怖がりのチキンだし、運動神経は鈍いし、デブいしねw

そんな自分でもこの程度にはなれました。
普通の運動神経とセンスの持ち主なら、自分程度にはすぐなれます。

どんどん吸収して、とっとと自分を追い越して行ってください。



自分は「怖くて危ないのは分かるけど、どうしたらいいのかも分からない」という人の踏み台になりたいんです。

そうする事が、あの思いを繰り返さず、悲しみを広げない唯一の方法だと信じています。
今までも、多分これからもね。

ノリック交通事故死
※画像と記事は直接関係はありません。

5 件のコメント:

  1. GSR750さん、初めまして。
    ’生き延びるために上達’ 心に響きました。
    楽しく安全にバイクライフを続けたいですね。

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    1. 初めまして。コメント有難うございます。
      こういう考え方を意識もってバイク乗っている方は少ないですよね。
      もしもの事があってからでは遅いですからね・・・

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    2. はじめまして。私もこの度GSR750ユーザーになることになりブログも参考に拝見し勉強になりました。息子も大型バイクに乗っており心配は尽きません。
      好きなバイクで悲劇が起きないようなライディングに心がけ、息子にも教えていきたいと思います。またブログも参考にさせてもらいます。    マットBK

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    3. マットBKさん
      はじめまして。つたないブログですがご参考になれば幸いです。
      もし関東にお住まいでしたら師匠の方で初心者向けの講習会を行ってますので、右メニューの最下部のコンタクトフォームよりご連絡下さい。
      初心者向けといっても、一般的なライディングスクールなどとは違い、自分のバイクを理解するとこからというところから入り、その上で自分に合ったライティングをレクチャーしてもらえると思います。

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  2. 死に損ないのばかやろう。

    バイクでイク以上の幸せな事はねえ❗

    おまえみてえな腰抜けがバイクのイメージを軟弱にするんだよ❗

    切腹しろ❗

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